はらくだしPPの大問題 公園のトイレ

公園のトイレ

自宅から6キロほど、川の上流にその公園はある。

ワタシが初めてその公園のトイレを利用したのはいつだったのだろう?

ランニング中にトイレを利用することは多いんだけど、公園のトイレを開ける時ってドキドキするよ。
特に初めて入るトイレなんて、開ける瞬間の緊張ったらないね。

すっごく汚れているかも知れない、
失神しそうな強烈な匂いかも知れない、
得体のしれない昆虫の宿になっているのかも知れない。
いやいや、そんな甘いもんじゃない。
もしかして、カギをし忘れた人が入ってるかも知れないし、
死体がこっちを見ているかも知れない。

なので、そーっと開ける。
すぐにでも逃げ出せるように身体を斜に構える。
そして、息を止め、瞼を半分閉じ、薄目でそおーっと見るようにしている。

**

だから最初にそのトイレを利用した時は、まず安堵感が先だった。
ずいぶんと綺麗に清掃されているんだなーって思っただけだった。

けれど、何回か利用させてもらってるうちに、 あまりのピカピカっぷりに感動すら覚えるようになっていった。

掃除したというより、磨いたという表現がピッタリくる。

仕事を超えたこだわりとか、情熱とか、魂とか、そんなもんが感じられる。
どんな人が掃除してくれているんだろう?
あー、掃除してくれた人に感謝の気持ちを伝えたいなーって、ずっと思ってたんだよね。

手紙を書いて置いて置こうかと考えたこともあったんだけど、掃除の方に渡るかどうかわからないからやめといた。

走っていると気持ちが高揚して、小さなことでも感激しちゃうのかもしれない。

で、今日だよ。
仕事が休みだったから炎天下の中、その公園を走った。
トイレは利用しなかったのだが、

あ…

いつもより遅い時間だったからか、お掃除している方がいらっしゃっる。

白髪の小柄の年配の女性だ。

チャンスだ。

行くか…

行くのか…

そのまま通り過ぎる。

なんだよ、お前。
行けよ。
思っているだけで伝えなければ、伝わらないんだぞ。

自分を励ます。

すぐに踵を返す。

行くぜ!

ワタシはトイレの前に立ち、女性に声をかけた。

『あの…いつもトイレを利用させて頂いている者です。いつも綺麗にして頂いてありがとうございます』

女性は手を止め、振り向き、ワタシの話を聞いて下さった。

トイレがいつもピカピカで気持ち良く利用させて頂いていること、
いつかお礼を言いたいと思っていたことなどを
汗びっちょりの顔で、ぶわーっと話した。

女性は自分の仕事に自信と誇りを持っておられ、
『このトイレに入るために、この公園に来る人もいるくらいなのよ』
『なんだか、綺麗にしないと気が済まなくてね』
『わざわざ、ありがとう。嬉しいわ』

と、おっしゃって下さった。

自分ちのトイレじゃないんだよ。
誰が使ったかわからないトイレだよ。

こういう人には尊敬しかないね。
お礼が言えて良かった。
うん、本当に良かった。

ワタシは走りながら、帰ったら家のトイレを掃除しようと決めた。

のに、

まだしてない。

これからやる。

多分。

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